土地売却でかかる税金はいくら?
土地売却時にはどんな税金がかかる?
土地売却時には「所得税」「住民税」「印紙税」の3つの税金がかかります。売却で利益(譲渡所得)が出た際に課されるのが、「所得税」と「住民税」です。まとめて譲渡所得税とも呼ばれ、利益に対して課されますので、土地売却で利益が出なかった場合は課税されません。
課税方法は、他の所得と合算した所得に対して課税される「総合課税」とは違い、他の所得と分離して課税される「分離課税」になります。
- 分離課税:他の所得とは合算せず分離した所得に対して課税。譲渡所得や配当所得など。
- 総合課税:他の所得と合算して総所得に対して課税。不動産所得や給与所得など。
また、「印紙税」は、収入印紙を契約書に貼付して納税するもので、契約金額によって納税額が決まります。このように、土地売却で利益が出た場合にかかる税金は、「所得税」と「住民税」、「印紙税」の3つです。
譲渡所得に応じて所得税と住民税が決まる
土地売却で譲渡所得が発生すれば、「所得税」と「住民税」がかかり、税額は譲渡所得額と土地の所有期間によって大きく変わります。所得税と住民税がどのように決まるのか仕組みを知っていると、適切な資金計画を立てることや節税をすることができます。
ここでは、所得税と住民税が発生する仕組みや税率、譲渡所得の計算方法について解説します。
税率は土地の所有期間で異なる
所得税と住民税の税率は、土地の所有期間が5年を超えるかどうかで大きく変わります。所有期間が5年以下は短期譲渡所得、5年超は長期譲渡所得に分けられ、それぞれの所得税率と住民税率は次の通りです。
短期譲渡所得(5年以下) | 長期譲渡所得(5年超) | |
所得税率 | 30.63% | 15.315% |
住民税率 | 9% | 5% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
※所得税率は復興特別所得税率(短期譲渡所得0.63%、長期譲渡所得0.315%)を含みます。復興特別所得税とは、東日本大震災からの復興に必要な財源確保を目的として創設された税金で、税率は所得税額の2.1%で2013年〜2037年(25年間)まで実施されます。
短期譲渡所得だと税率は約40%となり、長期譲渡所得のおよそ2倍です。
土地を取得して短期間で売却すると税金は高くなるため、節税したい場合は5年以上所有してから手放すことです。
なお、所有期間は、「土地取得日から売却年の1月1日までの年数」になります。例えば、2005年9月1日に取得した土地を2010年10月1日に売却した場合の所有期間は「2005年9月1日〜2010年1月1日」で4年4ヶ月とカウントします。
譲渡所得の算出方法
譲渡所得の算出方法は「譲渡収入金額−(取得費用+譲渡費用)」です。
譲渡収入金額は土地を売却して得た収入金額のことで、売却代金の他に固定資産税や都市計画税の清算金も含まれます。取得費用は土地購入時にかかった費用のことで、該当する費用項目は次の通りです。
- 購入代金
- 購入時に支払った仲介手数料
- 登記費用
- 不動産取得税
- 印紙税 など
また、譲渡費用は土地売却時にかかった費用のことで、以下のものが該当します。
- 売却時に支払った仲介手数料
- 測量費
- 印紙税 など
これらの譲渡収入金額、取得費用、譲渡費用の3つを用いることで譲渡所得を算出できます。
譲渡所得の算出例
ここでは、実際に譲渡所得を算出してみます。
- 土地購入価格:4,000万円
- 購入時諸費用:150万円
- 土地売却価格:5,500万円
- 売却時諸費用:160万円
上記の条件で譲渡所得を算出すると「5,500万円−(4,150万円+160万円)=190万円」となり、譲渡所得は190万円です。
特別控除を使えるケース
土地売却に使える特別控除は多数あり、最大5,000万円の特別控除を受けることも可能です。特別控除の種類や内容、要件を把握し、最適な控除が適用されることで、控除を知らずに売却するよりも100万円以上節税することが可能です。
ここでは、土地売却で使える特別控除の5つのケースについて解説します。
ケース1.公共事業目的で土地を売却【5,000万円の特別控除】
所有する土地を公共事業などのために売却をした場合は、5,000万円の特別控除を受けることができます。ただし、この特別控除を受けるには、次の要件すべてに当てはまることが必要です。
- 売却した土地が固定資産であること
- 公共事業のために売却した資産の全部で、収容等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例を受けていないこと
- 買取りの申し出から6ヶ月内に土地を売却していること
- 最初に買取りの申し出を受けた人が売却をしていること
これらの要件を満たす場合は、5,000万円の特例控除が適用可能なため、大幅な節税効果が期待できます。土地売却が2年以上にまたがる場合、特別控除を受けられるのは初年度のみです。
ケース2.平成21年〜22年に取得した土地を売却【1,000万円の特別控除】
売却する土地を平成21年もしくは平成22年に取得している場合は、1,000万円の特別控除を受けることができます。この特別控除は、リーマンショックの余波で低迷する不動産市場を活性化することを目的として作られたものです。
平成21年または22年に土地を取得して、5年超所有することで控除を受けることができます。この特例を受けるには、以下の要件を満たすことが必要です。
- 売却する土地を取得したのが平成21年1月1日〜平成22年12月31日の間であること
- 平成21年中に取得した土地は平成27年以降に売却、平成22年中に取得した土地は平成28年以降に売却をすること
- 売却する土地を夫婦や親子、内縁関係にある人など特別な間柄にある人から取得していないこと
- 売却する土地が交換や贈与、相続、遺贈、代物弁済などで取得したものではないこと
- 土地売却によって他の譲渡所得の特例を受けていないこと(収用等の場合の特別控除など)
これらの要件を満たす場合は、土地売却において1,000万円の特別控除を受けられます。譲渡所得額が1,000万円未満の場合は控除になるため、所得税や住民税が発生しません。
参考:国税庁 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除
ケース3.特定土地区画整理事業等のために土地を売却【2,000万円の特別控除】
国や自治体の土地区画整理事業・まちづくり活性事業などが理由で土地を売却した場合は、2,000万円の特別控除が適用されます。ただし、土地売却が2年以上にまたがる場合は、初年度しか特別控除を受けることはできません。
2,000万円の特別控除の対象となる土地の主な条件は、以下の通りです。
- 土地区画整理事業や住宅街区整備事業、第一種市街地再開発事業等のために売却する土地
- 古都保存法や都市緑地法等の規定に基づき売却する土地
- 重要文化財、史跡、名勝、天然記念物や国立公園、自然環境保全地域等の土地
- 保安施設事業のために売却する保安林として指定された区域等内の土地
参考:国税庁 《特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除》関係
ケース4.特定住宅地造成事業等のために土地を売却【1,500万円の特別控除】
所有する土地を、地方公共団体や地方住宅供給公社、独立行政法人中小企業基盤整備機構などの特定住宅地造成事業等のために売却した場合は、1,500万円の特別控除を受けることができます。
この特別控除を受けるには、以下のいずれかの条件を満たすことが必要です。
- 所有する土地の売却理由が地方公共団体等の宅地の造成や住宅の建設であること
- 土地の売却が住宅建設事業や特定の民間の宅地造成事業であること
- 公有地の拡大の推進に関する法律の規定に基づき土地を売却すること
- 土地売却が収用等の事業の対償地に充てる目的であること
参考:国税庁 《特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の所得の特別控除》関係
ケース5.農地を農業委員会のあっせん等で売却【800万円の特別控除】
所有する農用地区域内の農地を、農業委員会のあっせんや農用地利用集積計画によって売却した場合は、800万円の特別控除を受けることができます。また、農地利用集積円滑化団体や農地中間管理機構に売却した場合も同様です。
さらに、農業経営基盤強化促進法の買入協議によって農地中間管理機構に売却した場合は、1,500万円の特別控除を受けることができます。
土地売却自体にかかる税金
土地売却自体にかかる税金は、「登録免許税」と「印紙税」で、譲渡所得の有無に関係なく発生します。金額は決して大きくありませんが、事前に把握していると適切な資金計画や資金準備ができます。
ここでは、登録免許税と印紙税の内容や税額について解説します。
登録免許税
「登録免許税」とは、売却する土地の抵当権を抹消する際に支払う税金のことです。抵当権とは、ローンが返済できなくなった場合などに土地を差し押さえられる権利のことで、ローンを組んで土地を購入した際に金融機関等が設定します。
家や土地などの不動産を売却する場合、抵当権が設定されたままでは基本的には売れないため(※任意売却では可)、ローンを一括返済して抵当権を抹消しなければなりません。
「登録免許税」は抵当権抹消登記を行う不動産1つにつき1,000円になりますので、売却する土地が1つの場合、かかる登録免許税は1,000円です。
抵当権抹消登記は司法書士に依頼するのが一般的で、司法書士への報酬と一緒に登録免許税を支払います。ローンを一括返済すると、金融機関から以下の書類が届きますので、司法書士へ連絡をして早めに抵当権抹消登記を終わらせましょう。
- 抵当権設定契約証書(登記済証)
- 代表者事項証明書(登記事項証明書)
- 抵当権解除証書(弁済証書)
- 委任状
なお、土地の所有権を移行する際も登記変更で登録免許税が発生しますが、買主が支払うのが一般的です。
印紙税
租税特別措置法により、不動産の譲渡に関する契約書について、印紙税の軽減措置が講じられ、税率が引き下げられています。その概要等は次のとおりです(建設工事の請負に伴って作成される請負契約書についても軽減されております。)。
- 軽減措置の内容
軽減措置の対象となる契約書は、不動産の譲渡に関する契約書のうち、記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されるものになります。なお、これらの契約書に該当するものであれば、土地・建物の売買の当初に作成される契約書のほか、売買金額の変更等の際に作成される変更契約書や補充契約書等についても軽減措置の対象となります。 - 軽減後の税率
軽減措置の対象となる契約書に係る印紙税の税率は、課税物件表の規定にかかわらず、次表のとおりとなります。
契約金額 | 本則税率 | 軽減税率 |
100万円超500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 10,000円 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 20,000円 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 60,000円 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 100,000円 | 60,000円 |
※平成26年4月1日〜令和4年
印紙税は売主・買主の契約書2通分が必要になりますが、費用は双方で負担するのが一般的です。
譲渡所得が発生した場合は確定申告が必要
土地売却をして譲渡所得が発生した場合は、翌年2月16日〜3月15日(土日祝日で変更の場合あり)に確定申告を行い、所得税を納税します。確定申告書類は国税庁サイトの「確定申告作成コーナー」や会計ソフトを使って簡単に作成可能です。
期間内に申告と納税を行わないといけないため、早めに必要書類等を準備しておきましょう。なお、住民税は、確定申告の所得額をもとに各自治体で算出され、以下のスケジュールで納税します。
- 個人事業主など
5月〜6月に納税通知書着。年4回(6月・8月・10月・1月)に分けて納税。 - サラリーマンなど
6月〜翌5月まで給与から天引きで納税。
相続した土地を売却したい場合
親や祖父母から相続した土地を売却する人も少なくありません。相続した土地を売却する場合は、所有期間のカウントや譲渡所得の算出の際に、気をつけなくてはならないことがあります。
何も知らずに進めてしまうと、適切な資金計画が立てられない上に、想定以上の税金がかかることになるでしょう。ここでは、相続した土地を売却する際の所有期間カウント方法と譲渡所得の算出方法について、解説します。
短期・長期譲渡所得は被相続人の所有期間で決まる
相続した土地の所有期間は、土地を相続した後の期間ではなく、被相続人(亡くなった人)が相続する前から所有していた期間をカウントします。そのため、相続して1年しか経っていない場合でも、被相続人の所有期間が5年超であれば、適用される税率は長期譲渡所得の20.315%です。
もし、被相続人の土地所有期間が2年〜3年など5年未満の場合は、短期譲渡所得の税率39.63%が適用されます。このように、相続の場合は、土地の税率に大きな影響を与える短期譲渡所得・長期譲渡所得の判断基準は、被相続人の所有期間です。
譲渡所得の算出には取得価格が必要
先に紹介した通り、譲渡所得の算出方法は「譲渡収入金額−(取得費用+譲渡費用)」になりますので、土地の取得価格や取得時諸費用の情報が必要です。
つまり、被相続人が土地を取得した際の価格や諸費用金額が明らかでないと、譲渡所得の算出ができません。もし、被相続人が取得した土地価格がわからない場合は、売却価格の5%を取得費+諸費用として考える決まりがあります。
例えば、取得価格がわからず、土地の売却価格が3,000万円の場合は「3,000万円×5%=150万円」で取得費用はわずか150万円です。譲渡費用も150万円だとしたら、譲渡所得は2,700万円になります。
実際の取得価格は2,000万円で諸費用は100万円だとしたら、譲渡所得は900万円であり、取得費用がわからない場合と比べて譲渡所得が1,800万円も安く、その分節税が可能です。
ただし、取得費用がわからない場合、相続から3年10ヶ月以内の売却で一定の条件を満たせば、取得費加算の特例を受けられます。
取得費加算の特例は、相続税の一部を取得費に加算できる制度で、譲渡所得を減らし税金を抑えることができますが、相続税を支払っている人しか使えないため注意が必要です。
土地売却にかかる税金のシミュレーション
土地売却にかかる税金は、売却価格や所有期間などの条件の違いで大きく変わります。所有する土地を売却した場合に、どのくらいの税金が課税されるかシミュレーションできないと、適切な資金計画や資金の準備ができません。
ここでは4つの土地売却の税金シミュレーションを解説しますので、ご自身の土地と比べてみてください。
所有期間3年、取得価格4,000万円の土地を4,500万円で売却した場合
- 所有期間:3年
- 売却価格:4,500万円
- 譲渡時諸費用:150万円
- 取得価格:4,000万円
- 取得時諸費用:100万円
譲渡所得の算出方法は「譲渡収入金額−(取得費用+譲渡費用)」となるため、上記条件で土地売却をした場合の譲渡所得は、以下の通りです。
4,500万円−(4,100万円+150万円)=譲渡所得250万円
土地の所有期間は5年未満で短期譲渡所得に該当し、所得税30.63%、住民税9%の税率が課されるため、それぞれの税金は次のようになります。
- 所得税:765,750円
- 住民税:225,000円
· 合計:990,750円上記金額に加え、登録免許税が1,000円(抵当権抹消登記を行う場合)、印紙税が20,000円(契約書2通分、費用は売主・買主双方が負担するのが一般的)かかりますので、これらを合わせると税金は1,001,750円です。
所有期間4年と9年で取得価格5,000万円の土地を7,000万円で売却した場合
- 売却価格:7,000万円
- 譲渡時諸費用:300万円
- 取得価格:5,000万円
- 取得時諸費用:200万円
上記条件で土地を売却した場合の譲渡所得は、次の通りです。
7,000万円−(5,200万円+300万円)=譲渡所得1,500万円
土地所有期間は4年で短期譲渡所得(所得税30.63%、住民税9%)の場合と、9年で長期譲渡所得(所得税15.315%、住民税5%)の場合、それぞれの税金は以下の通りです。
所有期間4年の場合 (短期譲渡所得) |
所有期間9年の場合 (長期譲渡所得) |
|
所得税 | 4,594,500円 | 2,297,250円 |
住民税 | 1,350,000円 | 750,000円 |
合計 | 5,944,500円 | 3,047,250 |
さらに、抵当権抹消登記を行う場合は登録免許税1,000円、印紙税は60,000円(2通分、費用は売主・買主双方が負担するのが一般的)かかりますので、これらも合わせると税金は下記の通りです。
- 所有期間4年(短期譲渡所得):5,975,500円
- 所有期間9年(長期譲渡所得):3,078,250円
同じ譲渡所得でも、所有期間が異なるだけで300万円近く税負担に差があります。
親が3,000万円で取得した土地を相続して4,000万円で売却した場合
- 被相続人の所有期間10年
- 相続人の所有期間:2年
- 売却価格:4,000万円
- 譲渡時諸費用:200万円
- 取得価格:3,000万円
- 取得時諸費用:130万円
被相続人の親が3,000万円で取得して10年間所有した土地を相続し、2年ほど経って4,000万円で売却した場合の譲渡所得は以下の通りです。
4,000万円−(3,130万円+200万円)=譲渡所得670万円
相続の場合は、被相続人の所有期間で短期譲渡所得か長期譲渡所得が決まるため、所有期間10年の場合は長期譲渡所得が該当します。
- 所得税:1,026,105円
- 住民税:335,000円
- 合計:1,361,105円
登録免許税1,000円と印紙税20,000円(2通分、費用は売主・買主双方が負担するのが一般的)を合わせた税金は1,3872,105円です。
まとめ
本記事では、土地売却にかかる税金や特別控除、土地売却の税金シミュレーションなどを紹介しました。
最後に、ここで紹介した大事なポイント5点をおさらいします。
- 譲渡所得によって所得税と住民税が発生するか決まる
- 所有期間が5年未満だと税率39.63%、5年以上は税率20.315%
- 土地の条件によっては最大5,000万円の特別控除が適用される
- 譲渡所得が出た場合は翌年2月〜3月に確定申告をする必要がある
税金のシミュレーションをして適切な資金計画と資金準備をすること