任意売却メリット・デメリット
任意売却と競売の違い!メリット・デメリット・リスクを分かりやすく解説
任意売却と競売の違いをご存じですか?
任意売却は、債務者が自身の意思に沿って売却を進めます。対して競売は、債権者が裁判所に依頼し、債務者の意思に関わらず強制的に売却が進められます。
この記事では、任意売却と競売の違いについて、メリットとデメリットを比較しながら分かりやすく解説します。ぜひ参考にしてください。
競売はなぜ起こる?
競売および任意売却は、債務者がローンを数か月滞納した状態によって起こります。
銀行などの債権者が貸したお金を強制的に返してもらう競売に対し、任意売却は債務者と債権者が協議の上、債務者の意思に沿って売却を進めることが可能です。
競売は、債権者が裁判所に申し立てを行い、債務者の不動産を競売に出して残債を回収するので、市場相場の3〜5割安く取り引きされます。
競売で得たお金は住宅ローンの返済に充てられますが、通常の売却と比べ返済額が少ないので住宅ローンが多く残ります。住宅ローンが残るのは債権者側にも債務者側にとっても良いことではありません。
少しでも高く売って住宅ローンを減らすために任意売却という手段があります。通常、住宅ローンの滞納が続いている段階で任意売却の準備・計画に着手し、競売の開札が始まる前までに売却を済ませておくケースがほとんどです。任意売却は、引っ越しの融通がきくなど、競売よりもメリットがあります。
まずは任意売却を検討することをおすすめします。
任意売却と競売で残ったローンの支払いは?競売は自己破産?
任意売却や競売を行っても、残債を全額返済できるとは限りません。残債がある場合は、返済義務は残ります。
残債への対応は、任意売却か競売によって大きく変わります。任意売却の場合、無理のない範囲で返済計画を立て直します。競売の場合、残債の分割払いに応じてくれるケースもありますが、任意売却よりも残債額、返済額共に増えてしまうため返済が困難なケースや、そもそも分割に応じてもらえない場合には自己破産の選択肢もでてきます。
自己破産を選べば残債は帳消しになりますが、5〜10年の間は新規でのローンが組めないうえ、連帯保証人に返済義務が移ることになるのです。
可能な限り、返済計画を立て直すことができる任意売却を選択しましょう。
任意売却と競売の違いを簡単比較
下記の表が、任意売却と競売の違いをまとめたものです。金銭的な面や売却後の人生設計において、任意売却を選んだ方が良い場合もあります。
任意売却と競売の違い比較表
競売 | 任意売却 | |
売却金額 | 相場より3〜5割安くなる | 相場に近い価格で売れる |
残債の額 | 多い | 少ない |
残債の支払い | 一括返却または分割払い | 分割払いの交渉可能 |
プライバシー | 公開される | 守られる |
退去日 | 強制退去・過去日まで | 融通が利く |
引越し費用 | 出ない | 交渉次第 |
アドバイス | 自分で対応 | 専門家のアドバイス |
任意売却とは
任意売却とは、何らかの事情でローンが返済できない状態の時に、銀行などの債権者に抵当権の解除・承諾をもらったうえで売却することを指します。
抵当権とは、銀行や金融機関などからお金を借りる場合に不動産(土地や建物)に設定する担保物権のことです。金融機関などの債権者は、債務者の滞納が続く場合に「抵当権を実行」できます。
滞納が数か月続くと、債権者は抵当権を実行します。抵当権を実行した場合、担保物件である不動産は競売にかけられ、競売の売却価格が残債の返済に充てられることとなります。
競売は、通常の売買価格よりも3〜5割程安く売られるので、返済に充てる金額も少なくなり、残債が増えます。また、強制退去による明け渡しにも応じなければいけません。
対して任意売却を行えば、市場価格の8〜10割で売却ができ、残債を大きく減らすことが可能です。また、引越し費用などの控除も認められやすいというメリットがあります。
任意売却は競売に比べて債務者の負担の少ない選択だといえるでしょう。
なお、任意売却は、通常の不動産売買よりも専門的な知識も必要となるので、知識・実績が豊富な不動産業者に仲介をお願いしましょう。残債の返済方法や、引っ越しに必要な費用なども交渉します。
次に任意売却のメリットとデメリットについて解説します。
任意売却の3つのメリット
任意売却には以下の3つのメリットがあります。
- 競売に比べ価格が高くなる可能性がある
- 個人情報が出回らない
- 残債を分割支払いできる可能性がある
メリット1|競売に比べ価格が高くなる可能性がある
任意売却は、競売に比べて売却価格が高くなる可能性があります。その理由は販売方法の違いにあります。
競売は入札で購入希望者を募ります。入札とはオークション形式で買い手が価格を提示し、その中で一番高い値を付けた人が購入する権利を得るというものです。競売という特性上、相場以下の価格、希望以下の価格になる傾向があります。
一方で任意売却は、住宅ローンの残債額や債権者との交渉内容にもよりますが、通常の不動産売買と同様の相場で買い手を探すことも可能です。
競売は相場の5割〜7割程度、任意売却は相場の8割〜10割程度の価格で売れるケースが多いです。同じ債務整理ですが、競売と任意売却では売却価格に違いがでます。
メリット2|所有物件の情報が世間に出回らない
任意売却は所有物件の情報が競売情報として世間に出回りません。なぜなら、一般の不動産売買と同じ販売方法を取るからです。任意売却は競売に比べ、プライバシーが守られるメリットがあります。
メリット3|残債を分割支払いできる可能性がある
任意売却は売却後の残債を、分割支払いができる可能性があります。任意売却は「分割和解の契約」を結ぶことができるからです。債権者との協議次第では、生活に支障の出ない範囲の返済額で分割支払いの交渉ができます。
任意売却の3つのデメリット・リスク
良い点の多い任意売却にも、デメリット・リスクは存在します。
- 売却が希望通りに進まない場合がある
- 関係者の承諾が必要
- 依頼する不動産業者を間違えると、不成立となる
- 住宅ローン滞納3か月以上で信用情報機関に掲載される可能性がある。
詳しく説明します。
デメリット1|売却が希望通りに進まない場合がある
任意売却は、希望通りに売却が進まない場合があります。
売却希望価格が近隣の相場とかけ離れていたり、そもそも買い手が付きにくい物件である場合は、思うように売却が進みません。競売のように入札ではないので、不動産業者と相談しながら価格を見直し、適切な価格に再設定することが重要です。
そもそも買い手が付きにくい物件であった場合、障害となっていることを取り除かなくては売ることは難しくなります。修繕などの金銭的な問題が出てくることもあるので、不動産業者に助言をもらいながら進めていく必要があります。
デメリット2|関係者の承諾が必要
任意売却は、関係者の承諾なしに行うことはできません。
関係者とは債権者および所有権を持つ人です。債権者からの同意を得て抵当権を外す許可をもらわなければ任意売却を行うことができません。また、任意売却を行うには所有権を共有する全ての人の同意が必要です。
親族などが共有者の場合は問題ありませんが、元配偶者などの関係性が複雑な人が共有者の場合、同意を得ることが難しいケースもあります。
デメリット3|依頼する不動産業者を間違えると、不成立となる
依頼する不動産業者を間違い、任意売却が不成立となるリスクもあります。
任意売却は金融機関などの債権者との交渉や、通常の不動産売買では利用しない法律の知識が必要となる売却方法です。不動産業者によっては、金融機関との交渉をまとめられなかったり、引っ越し後の処理ができなかったりする場合があります。債務者が損をする結果になりますので注意しましょう。
デメリット4|住宅ローン滞納3か月以上で信用情報機関に掲載される可能性がある。
任意売却に限ったデメリットではありませんが、住宅ローンを3か月以上滞納した場合は信用情報機関に登録される可能性があります。信用情報機関へは他の借り入れ(カードローンや消費者金融など)を滞納しても登録されてしまします。以前は0円携帯のように分割で支払っていくようなリース商品も、支払いが滞ってしまうと信用情報機関に登録されます。この信用情報機関に登録されてしまうと7年間程度は金融機関からの借り入れ等ができなくなる等の影響があります。
競売とは
競売とは、建物や土地を購入する際に借りたローンを返せなくなった場合に、債権者が裁判所に申し立てを行いオークション形式で購入者を募る売却方法のことです。
一般的な不動産相場よりも、安い価格で売却されることがほとんどです。また法的な力が強く、債務者に交渉の余地がありません。そのほか、情報誌・インターネット上に所有物件の詳細情報が記載されるので、プライバシーも守られません。
以下で、競売の期間とメリット・デメリットについて解説します。
競売の期間
ローンを滞納し始めてから最短3か月で債権者が裁判所に申し立てを行い、その後、債務者に「競売開始決定通知」が届きます。競売期間決定通知が届いてから開札までの期間は、6〜9か月が目安です。
競売開始決定通知が届いてから1〜2週間で、裁判所の執行官により自宅の現況調査が行われます。その後約3か月で「入札期間・開札日の通知」が言い渡され「競売情報が公示」されます。入札は「入札期間・開札日の通知」が届いた約2か月後に開始され、1週間後には開札となります。
競売の2つのメリット
競売にも次の2つのメリットがあります。
- 売却の手間がかからない
- 任意売却よりも長く住める可能性がある
多くの人にとって任意売却の方がメリットがあるので、特別な事情がない場合には不動産業者に相談することをおすすめしますが、競売にもメリットが存在します。
以下では競売のメリットを一つずつ詳しく解説します。
メリット1|売却の手間がかからない
競売は、法的な手続きの中で裁判所が売却を進めます。
債務者は売却手続きをする必要がないので、任意売却と比べ手間がかかりません。何もしなくても、家が競売にかけられて自動的に売却される点がメリットです。
メリット2|任意売却より長く住める可能性がある
競売は、任意売却よりも長く住める可能性があります。
任意売却はスピード感を意識しながら販売活動を行うので、売り出してから契約成立までを短い期間で成立させます。対して、競売は滞納から所有権移転まで約9か月〜1年数か月の時間がかかりますので、任意売却と比較すると今の家に長い期間住むことができます。ただし、これからの長い人生を考えると必ずしも大きな差とはいえません。
競売の3つのデメリット・リスク
競売には次の3つのデメリット・リスクがあります。
- 任意売却に比べて売却価格が安くなる可能性が高い
- 所有物件の情報が競売情報として世間に出る
- 強制的に立ち退きが迫られる
一つずつ詳しく説明します。
デメリット1|任意売却に比べて売却価格が安くなる可能性が高い
競売は任意売却に比べて、売却価格が安くなる傾向にあります。
具体的には、競売物件は一般的な相場より3〜5割ほど安い価格で落札されます。任意売却は相場の8〜10割で取り引きされることが多く、明らかに任意売却に比べて安くなるのです。売却価格が残債の返済にも影響を与えるので、なるべく高く売却できる任意売却をおすすめします。
デメリット2|所有物件の情報が競売情報として世間に出る
競売の際に、情報誌・インターネット上に所有物件の情報が記載される点もデメリットです。
競売にかけられている物件情報が世間に出ることに加え、不動産鑑定士や裁判所の執行官が調査のために訪問したり、競売物件の購入を検討している不動産業者が詳細な情報を収集する目的で、近隣住民に聞き込みを行ったりします。これらの結果、知り合いや近隣の人に競売にかけられている事実、つまりローンを返済できない事実を知られてしまう可能性が考えられるのです。
デメリット3|強制的に立ち退きを迫られる
競売のデメリットとして、強制的に立ち退きを迫られる点が挙げられます。
退去日について任意売却が買主との交渉の余地があることに対し、競売は明け渡しの催告で言い渡された日時に強制執行されます。なお、強制執行を拒否することはできません。